疑義照会は薬剤師法第24条で定められた薬剤師の重要な義務であり、患者さんの安全を守るための最後の砦です。しかし、「医師に電話するのが苦手」「何をどう伝えればいいかわからない」「照会したら嫌な顔をされた」と悩んでいる薬剤師は少なくありません。疑義照会をスムーズに行うためには、的確な情報整理と、医師との適切なコミュニケーションが欠かせません。この記事では、疑義照会の基本的な手順から、電話での伝え方のコツ、記録の書き方まで実践的に解説します。

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疑義照会とは、応需した処方箋の内容に疑わしい点や不明な点がある場合に、処方した医師に問い合わせをして内容を確認する業務です。薬剤師法第24条により、疑わしい点がある処方箋についてはその疑わしい点を確認した後でなければ調剤してはならないと定められています。
疑義照会の2つの種類
疑義照会は大きく2つに分類されます。
- 形式的疑義照会:処方箋の記載不備に関するもの(記載漏れ、判読不能、処方日数の記載ミスなど)
- 薬学的疑義照会:薬学的観点から処方内容に疑問がある場合のもの(用量過多、相互作用、重複投与、禁忌薬の処方など)
薬学的疑義照会は薬剤師の専門性が問われる業務であり、患者さんの安全に直結する重要な職務です。
疑義照会の基本的な手順
疑義照会を行う際の基本的な流れを確認しておきましょう。
ステップ1:問題の特定と情報整理
処方箋を確認して疑わしい点を明確にします。何が問題なのか、なぜ問題だと考えるのか、根拠となる情報(添付文書の記載、患者の検査値、併用薬の情報など)を整理してから医師に連絡しましょう。
ステップ2:代替案の検討
疑義照会の際に代替案を用意しておくことで、医師の判断がスムーズになります。「〇〇の用量を△△に変更するのはいかがでしょうか」「□□に変更するという方法もあります」など、具体的な提案ができると医師からの信頼度も上がります。
ステップ3:医師への連絡
電話またはFAX、電子的手段で医師に連絡します。電話の場合は、自分の所属薬局名と名前を名乗り、患者名と処方内容を伝えた上で疑義の内容を簡潔に説明します。医師が忙しい場合は、折り返しの電話を依頼しましょう。
ステップ4:回答の確認と記録
医師からの回答を復唱して確認し、その内容を記録します。処方変更がある場合は、変更後の内容を正確にメモしましょう。
ステップ5:患者さんへの説明
疑義照会の結果として処方内容が変更になった場合は、患者さんに変更の理由と新しい処方内容を丁寧に説明します。患者さんを不安にさせないよう、「より安全にお薬を使っていただくために確認いたしました」などの表現を使うと良いです。

電話での疑義照会のコツ
疑義照会の多くは電話で行います。電話での伝え方のコツを押さえておきましょう。
最初に名乗る
「〇〇薬局の薬剤師△△と申します。××先生の処方箋について確認させていただきたいことがございます」と、所属・名前・目的を最初に明確にしましょう。
要点を簡潔に伝える
医師は多忙です。疑義の内容を簡潔にまとめ、長々と説明しないことが大切です。「〇〇様に処方された△△薬の用量について確認させてください。添付文書の上限が〇mgですが、処方は△mgとなっており、先生のご意図を確認したいのですが」のように、要点を先に伝えましょう。
「確認」のスタンスで話す
疑義照会は医師の間違いを指摘する場ではありません。「確認させてください」「ご相談させてください」というスタンスで話すことで、医師との関係を良好に保てます。上から目線で指摘するような言い方は避け、あくまでも「患者さんのために確認している」という姿勢を伝えましょう。
回答を復唱して確認する
医師からの回答は必ず復唱して確認しましょう。「それでは、〇〇薬の用量を△mgに変更ということでよろしいでしょうか」と確認することで、聞き間違いを防げます。
お礼を忘れない
「お忙しいところご対応いただきありがとうございました」と感謝の言葉を伝えて電話を終えましょう。些細なことですが、次回以降の疑義照会もスムーズに進めやすくなります。
疑義照会が必要になる代表的なケース
どのような場合に疑義照会が必要になるのか、代表的なケースを確認しておきましょう。
用法・用量の問題
添付文書に記載された用量の範囲を超えている場合や、用法が一般的でない場合は疑義照会の対象です。小児や高齢者、腎機能・肝機能が低下した患者さんでは、体格や臓器機能に応じた用量調整が必要になることがあります。
相互作用・併用禁忌
他院の処方やOTC薬との相互作用が懸念される場合は、速やかに疑義照会を行います。特に併用禁忌に該当する組み合わせは、重篤な副作用につながる可能性があるため、確認なしに調剤してはいけません。
重複投与
同じ成分や同じ薬効の薬が複数の医療機関から処方されている場合は、重複投与の可能性を確認します。お薬手帳やレセコンの情報を活用して早期に発見しましょう。
アレルギー・禁忌
患者さんの既往歴やアレルギー情報と処方内容を照合し、禁忌に該当する薬が処方されていないか確認します。
処方箋の記載不備
患者名、医療機関名、医師名、処方日、用法・用量の記載に不備がある場合も、形式的疑義照会として確認が必要です。
疑義照会を行わずに調剤した結果、患者さんに健康被害が生じた場合は、薬剤師の責任が問われることがあります。「おそらく問題ないだろう」と自己判断せず、少しでも疑問があれば医師に確認する姿勢が大切です。
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ファル・メイトの公式サイトはこちら疑義照会の記録の書き方
疑義照会を行った場合は、その内容を正確に記録する義務があります。
記録に含めるべき項目
- 疑義照会を行った年月日・時刻
- 照会した医師名
- 照会した薬剤師名(押印)
- 疑義の内容(何が問題だと考えたか)
- 照会の根拠(添付文書の記載、検査値など)
- 医師からの回答内容(処方変更の有無・変更内容)
- 対応結果(処方変更して調剤した、医師の判断でそのまま調剤した等)
記録のポイント
記録は第三者が読んでも経緯がわかるように、客観的かつ簡潔に書きましょう。感情的な表現や主観的な評価は避け、事実と結果を淡々と記載することが大切です。電子薬歴を使っている場合は、疑義照会専用の記録テンプレートが用意されていることが多いです。詳しい書き方はマイナビ薬剤師の疑義照会ガイドやファルマスタッフの疑義照会解説も参考になります。

医師との良好な関係を築くために
疑義照会をスムーズに行うためには、日頃から医師との信頼関係を築いておくことが重要です。
トレーシングレポートの活用
緊急性のない情報提供は、トレーシングレポート(服薬情報提供書)を活用しましょう。患者さんの服薬状況や副作用の兆候、生活上の変化など、医師に知っておいてほしい情報を文書で伝えることで、普段からの連携が深まります。
処方意図の理解に努める
疑義照会の前に、「なぜこの処方になったのか」を考える習慣をつけましょう。添付文書上は一般的でない用法・用量でも、患者さんの状態に応じた意図的な処方である場合もあります。根拠のある疑義照会は医師からも歓迎されます。
プロトコルに基づく薬物治療管理(PBPM)の活用
医師との間でプロトコルを事前に合意しておくことで、一定の範囲内での処方変更を薬剤師の判断で行える仕組みもあります。PBPMを活用することで、軽微な変更(残薬調整・規格変更など)について逐一疑義照会を行う手間を削減でき、薬剤師の裁量も広がります。処方監査のスキルを高める方法についても、以下の記事で詳しく解説しています。

よくある質問(Q&A)
Q. 疑義照会したら医師に怒られた場合はどうする?
残念ながら、疑義照会に快く対応してくれない医師もいます。しかし、患者さんの安全を守るための法的義務である以上、必要な疑義照会を行わないわけにはいきません。感情的にならず、「患者さんの安全のために確認させていただきました」と冷静に対応しましょう。日頃からトレーシングレポートなどで信頼関係を築く努力も大切です。
Q. 疑義照会に時間がかかって患者さんを待たせてしまう場合は?
患者さんには「お薬の安全を確認するためにお時間をいただいています」と説明しましょう。長時間かかりそうな場合は、先に他の患者さんの対応を進め、疑義照会の回答が得られ次第、該当の患者さんに連絡する方法もあります。
Q. FAXでの疑義照会は問題ない?
FAXでの疑義照会は認められていますが、緊急性の高い内容(禁忌薬の処方など)は電話で直接確認するのが適切です。FAXの場合は回答が返ってくるまでに時間がかかることもあるため、急ぎの案件では電話を優先しましょう。
まとめ
疑義照会は薬剤師の法的義務であり、患者さんの安全を守るための重要な業務です。スムーズに行うためには、問題の特定と情報整理、代替案の準備、簡潔で的確な伝え方が鍵になります。医師への連絡は「確認」「相談」のスタンスで臨み、回答は必ず復唱して確認しましょう。記録は第三者にもわかる客観的な内容で残し、日頃からトレーシングレポートなどを通じて医師との信頼関係を築いておくことが、疑義照会を円滑に進めるための最善の方法です。


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